小学生の英語教育についてご注意いただきたいこと

 

「小学校のうちから英語を習わせといた方がいいですよね?」 というご質問が多いので、私の考えをお伝えします。

  

周囲がやっているから英語を習わせている」この理由のご家庭が多いですが、これはNGだと思います。

 

理由は以下で説明します。特に英語教育の方針の軸が固まっていないご家庭は、集中してお読みいただけると幸いです。

 

 

これから先の時代で、英語が大事であることは間違いありません。

 

ですが、世の中の英語教育が過熱気味なのは、冷静に考えたいところです。

 

小学校時代の国語・算数と、英語のどちらが大事だとあなたは考えますか?私は国語・算数だと即答します(近い将来海外で生活するのが決定している場合のみ英語)。

 

国語は全ての勉強の土台、算数は考えるもととなる脳を鍛える勉強だからです。国語・算数でつまづいていたら、学校(もっというと人生)でずっと困ることになります。

 

我々日本人は英語を勉強するときも、日本語で脳を使って考えます。英語を詰め込む前に、土台である日本語+脳を鍛えることが大事だと、上記表を見ていただければ学校の授業時間からも分かります。

 

小学校では、国語は1461時間、算数は1011時間勉強します。世間で大事だと言われている英語は210時間しかないので、いかに国語・算数が重要かがお分かりいただけると思います(外国語だけですと140時間ですので、国語は約10倍の時間設定されています)。 

 

仮に小6の国語と算数でつまづいていた場合、350時間(175+175)もの復習時間が必要になります。毎日1時間勉強したとして、年間365時間です。国語と算数の復習をするだけで1年かかる量なのです。

  

現場で見ている限り、英語を重視しすぎたばかりに、国語・算数の勉強時間が減り、中学入学後、国語・数学の点数が取れていないケースが意外と多いです。

 

中学生になって英語のテストの点数がイマイチだったことで、小学校の時に英語に時間を使いすぎたと後悔されているご家庭を複数見てきました。

 

 

中学校の英語教育の実態

じゃあ小学校時代にそこまで英語の勉強しなくていいのかといったらそれも違います。程度問題です。英語をやりすぎたら中学校で困る可能性があるという話であって、英語の先取り学習をしていなくても困るのです。

 

上の図でも分かる通り、中学校の英語では、小学校で学ぶ600以上の単語を理解し、書ける前提で始まるからです。

 

英文法は、ユニット1でBe動詞の肯定文、疑問文、否定文。一般動詞の肯定文、疑問文、否定文、canを使った文(下の画像参照)。そして新出単語に既習単語、合わせて100個以上を書けることが前提です。

 

そこまで求めるくせに小学校では、授業時間は国語の10分の1。書く勉強が全然足りません。今の時代の英語のカリキュラムがいかに無茶なのかは、多少なりとも英語を勉強してきた我々世代なら、理解できるはずです。

 

中学校の英語のテストで点数を取るためには、何よりも「書く」練習です。 

 

英検を持っていても中学校のテストで点数が取れない?

 

英検は英語を書く試験ではなく(記述は3級から)、記号から選ぶ試験です。中学校の英語のテストは筆記なので、求められる能力が違います。

 

小学校で英検3級(中学卒業レべル)を持っていて、中学校の最初のほうのテストは90点以上取れていた子でも、書く練習をしていないと、徐々に点数が取れなくなってくる子も多いです。

 

下の画像は、とある中学校の1年生のテストの点数分布(70点台の次に多いのが10点台、その次が90点台、その次が20点台。準備をしている子としていない子が明確に分かれています。準備しすぎても、しなさすぎても困る。これが今の中学校英語の現実です。悪いのは日本の教育制度です。)

 

ですから、当塾では中学に入ってから困らないよう、小学6年生から「受験英語」の勉強を始めますのでご安心ください。

 

英検を持っていると受験で有利になるという方もいますが、英検・数検・漢検を持っているからといって、県立志望の子には、ほぼ関係ありません。当日取った点数の一発勝負で、合格者の大半が決まるからです。信じられない方は、ぜひご自身で受験要綱をお調べください。

 

英検は準2級以上(高校中級レベル)で初めて、私立の推薦の受験資格が得られる程度のものです(しかも数ある受験資格の内の1つにすぎない)。  

 

子どもが英語を勉強したがらないんです

 

こんなお悩みもお聞きします。

 

小学校の英語のテストを見ていただくと分かりますが、非常に易しいです。先取りしなくても十分高点数は取れます。ですので、英語を勉強する必要性やモチベーションが、どうしても湧きづらいです。

 

子どもが必要だと感じていない状態で、やりたくもない英語の習い事を必要以上にやらせても、本気になりづらいため、知識も定着しづらく、日常で使わないからすぐに忘れるという悪循環になります。 

 

その場合は、無理に勉強させる必要はないと思います。費用対効果が悪すぎて、お金も時間も無駄と感じ、英語の習い事をやめるご家庭も少なくありません。

 

どうしてもやらせたいという方は、親御さんがお子様と一緒に英語の勉強をしてください。

  

親が英語を趣味のように勉強していると、子どもも積極的に興味をもつようになります。

 

「なぜ将来必要と言っているのに、お父さんお母さんは勉強していないの?」と思うのが子どもの心理です。親が勉強していなかったら説得力に欠けるので、お子様が英語に興味を持ちませんし、英語力が高まりづらいのはご理解いただけますよね。

 

最後に補足として、英語教育について注意したいことを2つの観点から説明します。

 

 

1.仕事面

 

現時点で、英語を仕事で使っているの会社は「全体の2%程度」だそうです。英語は将来必要になると言われていますが、この2%が50%になるとは考えづらいです。日本は島国ということもあり、国内でお金を回す内需の国(つまり日本人相手に日本人がビジネスをして成り立っている)だからです。

   

戦争になり、国が乗っ取られでもしない限り日本語を使わなくなるということはないはずです。

 

日本に来る外国人は、日本語を学んできます。日本で彼らと話すのに、英語は必要ないです。そして彼らの英語はペラペラなので、日本の英語教育では仕事で彼らに太刀打ちができません。

 

通訳ができるレベルでないと、話にならない仕事も多いです。今の翻訳機は1秒で翻訳できますから、英会話を習っているレベルでは仕事になりません。

 

 

2.会話力面

 

私は大学時代にオーストラリアのシドニーへ3週間、アメリカのロサンゼルスに2週間、短期留学しました。高校卒業レベルの英語力でしたが、ホストファミリーと数日で英語で日常会話ができるようになりました。英語しか使えない環境でしたので、自然と話せるようになります。

 

日本に帰り、英語を使わなくなったら、話せなくなりました。それはそうですよね。

 

日本の中学校の英語教育は受験英語になるので、日常的に英語を話していないと、話せなくなります。小学校で英会話を習っているご家庭は、学ばせた英会話を腐らせないために、「食事中は英語のみでの会話」、「外国籍のご家庭と定期的に交流する」など、英語を話す習慣を続ける必要があります。

 

引っ込み事案なお子様で英会話を習っているご家庭に冷静にお考えいただきたいのは、「英会話を習う前に必要なのは、対人コミュニケーション力ではないでしょうか?」ということです。もちろん英語に慣れさせたいという理由であれば、習わせても問題ないと思うのですが、英会話である必要があるのかは再考してもいいかもしれません。

 

 

まとめ

  

まとめると、

 

1.英語に抵抗をなくさせたいのか?慣れさせたいのか?

2.英語のコミュニケーションで楽しませたいのか?

3.英検を取得することで自信をつけさせたいのか?

4.英語のテストの点数を取らせたいのか?

 

英語を学ばせる理由は、4つのうちでどれが一番近いでしょうか?そして、どこまでの英語レベルを目指されるのでしょうか?

  

「やらせないと不安だから」と感じる方もいるかもしれませんが、小学生のうちに当塾に預けていれば、中学校でついていけなくなることはありませんので、ご安心ください。

 

小学生では1,2が第一目的の場合が多いと思います。ですが、それは小学校の英語の授業で十分です。小学校の英語の授業は、それが目的だからです。

 

3が目的なのであれば、小学校では英検は4級まであれば十分だと個人的には思います(国語と算数に困っていない前提)。

 

小学校の国語と算数のテストで90点以上取れていて、小学校の授業を持て余す学力があれば、中学受験か英検3級以上取得を目指すのもありだと思います。 

 

最後に余談ですが、塾ではカバーしきれない部分として、今の中学英語の教科書にはQRコードがついていて、スマホ等で読み取ると、リスニングや発音の練習ができます。その点は、ご家庭でご協力いただけますと非常に助かります。

 

小学生の英語教育を否定したいわけではありませんので、その点は誤解のないようにお願いいたします。

  

世の中の一般常識が必ずしも幸せにつながっているとは限らないので、お子様の能力に合わせて、必要だと思われる部分は参考にしていただけますと幸いです。

 

英語に意識が行き過ぎて、英語嫌いにさせてしまうことだけは、お気を付けください。